2011年3月13日日曜日

福島第一原発(知人からのメール)⑥

Nです。転送します。
放射能と放射線の違い、心がけることなどの予備知識です。
***
Uです。

すでに福島第一原発正門付近で、放射線値が上がっているとの
報道を受けて、ここで放射能と放射線について、知っておくべきことを
まとめておきたいと思います。

放射能とは放射線を発する能力のことを指します。これをもった
物質を放射性物質と呼びます。

放射線にはいくつかの種類があります。代表的なものはアルファー
線、ベータ線、ガンマー線、X線、中性子線などです。
それぞれが原子の中の物質により構成されますが、最も粒子が
大きいのがアルファー線、小さいのが中性子線です。

人体への打撃はアルファー線がもっとも高い。エネルギー量が
大きく、電離作用(人体を構成する分子と分子がつながっている
電子をたたいて、分子のつながりを壊してしまうこと)が強いため
です。実体としてはヘリウム原子核と同じで、粒子が大きく、
飛ぶ距離はごくわずかです。数ミリか数センチぐらいでしょうか。
このため紙一枚でもふせぐことができます。

ベーター線は次に打撃力を持った物で、アルファー線ほどでは
ないものの、やはり強い電離作用を持っています。ベータ線の
実体は電子です。これは1センチのプラスチック板でも防ぐことが
できます。

これに対して、レントゲンに使われているのが、X線です。実体は
電磁波です。ガンマー線もほぼ同じ物と考えてよいかと思いますが、
これは遠くまで飛びます。その場合、発生源からの距離にもよりますが、厚いコンクリートでなければ防げません。

中性子線はさらに透過力が強く、なんでも通ってしまいます。
しかしエネルギー量はアルファー線に比べれば格段に小さく、
電離作用もそれだけ小さいです。


放射線を避ける場合に、これら違った放射線があることを知って
おく必要があります。ちなみに放射線計測器といっぱんにいいますが、
これら全てを一つで万能に計れるわけではありません。
いわゆるガイガーカウンターは、事実上X線対策のためのものです。
アルファー線やベータ線も計れはするのですが、それぞれあまり
長い距離を飛ぶわけでないので、発生源に近づけなければ、
感知できないからです。
つまりガイガーカウンターは、アルファー線やベータ線を放射しうる
物質がどれだけ浮遊しているかを計るものではないということです。

中性子線の測定はさらに特殊な装置が必要です。JCO事故では、
中性子線が発生し続けていたのですが、これを測定する機器の到着が
遅れたこともあって、長らく測定できず、救急隊や報道陣が
それと知らずに現場にむかって中性子線をあびてしまっています。
福島第一原発では、モニターが正常作動しておらず、手持ち
のもので測っていると報道にあるため、X線しか検出されて
いない可能性があります。


さて放射線が外に漏れたという場合、実は、原子炉内から放射線が
外に出ている場合と、放射性物質が外にでて、それが放射線を
発生している場合とがあります。
万が一の爆発があった場合も同じですが、この場合の恐ろしさは
大量の放射能(放射性物質)が出ることです。

放射能(放射性物質)はウランの核分裂によって出来た物質です。
ウランの割れ方によりいろいろな物質ができます。その中でも
恐ろしいのが大量に炉心内に作らている放射性ヨウ素です。これは
ベーター線を発する物質の固まりと考えるとわかりやすいです。
大気中に放射性ヨウ素が出た場合、物質として浮遊します。

このとき雨が降ると、水滴に混じって落下してきて人体と接触し、
体内に取り込まれてしまいます。そうするとヨウ素はなぜか人体の
甲状腺などに集まる性質を持っています。あるいは人体がヨウ素を
ここに取り込むようにできているのかもしれません。

そうすると甲状腺に濃縮されたヨウ素から、ものすごい高エネルギーの
アルファー線が、周辺をたたき続けます。このため発生するのが
甲状腺がんで、チェルノブイリではたくさんの人々、とくに子どもが
かかりました。

対処法としては、原発事故直後に、放射性ではないヨウ素をさきに
飲んでしまい、甲状腺を埋めてしまう方法があります。
これに使えるヨウ素剤としては、ヨウ化カリウム剤を一般の薬局で
購入することが出来ます。(ただしほとんど在庫はしてなくて
取り寄せになるでしょう)

このほかにもアルファー線やベーター線を発する物質はたくさんあります。
劣化ウラン弾の粉末もアルファー線を発する物質ですが、ともあれ
アルファー線やベータ線は、放射線として飛んできて、体の中に
入ることは少なく、放射能として運ばれてきて、体内に
取り込まれ、そこで周辺に壊滅的な打撃を与えるものです。

このため、原発事故にあたっては、放射能を体内に取り込まない
ことが大切で、とくに雨にうたれることは絶対に避けるべきです。
場合によっては逃げるよりも屋内にいた方がいいというのは
こうした判断に基づくものです。


それではX線などは怖くないのかというと、そうではなくて別種の
怖さがあると考えた方がよいです。透過力は断然上で、量が
多いと、レントゲンの強いヤツを何度も浴びるのと同じコトになり、
当然このことでも電離作用が生じて、ガンなどが発症する可能性が
生まれます。

このため放射能対策にあっては、物質として飛んでくる放射能と、
放射線として飛んでくるものへの対処の双方が必要になります。
マスコミ報道では放射線と放射能がしばしばごちゃごちゃになり
ますので、とにかく放射能漏れとか放射線漏れが伝えられたときには
可能な限り、発生源から離れることと、同時に雨に注意し、放射能
に触れないように注意することが必要です。
この点で、ある条件下においては、屋内の方がまだまし=被曝量が
少なくなりうるというわけです。

あと全ての放射性物質には半減期というものがあります。
放射線を発する能力が半分になるまでの時間です。
これらが放射能力が弱くなる一つの目安としてありますが、この
時間は、エネルギー量の大きいものほど早い傾向があります。
つまり放射線のエネルギーの大きい物、人体にダメージの大きい
ものほど、たくさんのものを出しているので、それだけ放射能力が
早く失われていくということです。

ちなみにヨウ素の半減期は8日間です。8日たつと能力が半分に
なり、また8日たつとその半分になりますので、時間とともに
脅威が少なくなっていきます。
ちなみにチェルノブイリ事故ではこうした情報を政府が伝えなかった
ため、事故直後に放射線ヨウ素で汚染された牛乳が出回り、
多くの子ども達が飲んでしまったと伝えられています。
この場合は、牧草→牛→人間という経路をたどったということです。

このほか、よく話題にあがるのがセシウムやストロンチウムに
よる土壌汚染ですが、こちらの場合の半減期は30年です。
これらは植物、昆虫、キノコ等々に取り込まれますが、そのたびに
濃縮されてしまいます。
チェルノブイリの周辺の数百キロでは、土壌汚染の上に
汚染されていない土をかぶせる作業が延々と続いています。
100年はかかると言われています・・・・。

このように放射性物質の中には、1日のうちにも半減期に達する
物質もあれば、半減期が何万年超というものもあるものの、ともあれ
安全性は時間とともに高まります。このため逃げることができずに
屋内待避をするなら、屋内の気密性を高め、とくに雨には最大の
注意を払ってサバイバルすることです。


転送者付記:発信者のUさんは原子力の研究者でも技術者でもなく、在野の個人で主に東南海地震における浜岡原 発の事故予測などについて自分で学習されてきた方です。ですので技術者なら断定しないような予想や予測もときには混じるかもしれませんが、それを差し引い ても私は有意義だと思ってみなさんに転送しています。そのあたりはお含みおきください。本当をいえば、Uさんのやってるようなことをメディアがちゃんとや るべきだと思います。原子力の専門家の解説としては、原子力資料情報室(脱原発を目指すNGO)の記者会見をお勧めします。原子炉設計者などによる見解が 逐次発表されています。
原子力資料情報室http://www.cnic.jp/modules/news/

1 件のコメント:

  1. Uさんのおっしゃる放射能とは放射性物質ということでよいのでしょうか?
    たしかに テレビを見ていると情報がごちゃごちゃになっていて 気になりますね。
    貴重な情報ありがとうございます。

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