2009年9月4日金曜日

高浜さんからの寄稿「旅するまちなみ」

9月13日に、椋川地区内をステージにして行われる積木をつかったワークショップ。
高浜利也さんがコーディネートするのですが、高浜さんが軽井沢にある脇田美術館(中庭)で同様のワークショップをされたときの模様が↓
です。

さて高浜さんから、今回の椋川でのワークショップへの思いを頂きましたので、紹介させて頂きます。

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Community on the move (旅するまちなみ)/椋川

高浜利也

 「旅するまちなみ」は積み木のまちなみごと各地を移動しながら展覧会やワークショップとして展開させ、続けているプロジェクトです。私が訪れた土地で調達した素材を、自らの手で積み木に加工し、「場」(=旅するまちなみ)に関わった人々に積み木の家をつくってもらいます。そして、思い思いの場所へ設置してもらうものです。まちなみにいろんな価値観や背景を持つ人々が加わることで、摩擦や滲みを生じながらコミュニティーが膨張してゆく様子を視覚化させるねらいがあります。

 今回、廃村となった小原谷の存在を知ったことが制作の発端となりました。小原谷で暮らしていた方々にお会いし、お話をうかがう機会に恵まれたことは実に幸運でした。そしていくつかの興味深いエピソードに出合ったのです。その中でも一番、印象的だった話、それは世間で今、大きく叫ばれているエネルギーや食料などの環境への負荷の少ない循環の理念、いわゆる”エコ”が、かつての小原谷で遠い昔に実践されていたという事実でした。全4戸をまかなうための水力発電や炭焼き、田んぼ、畑作、養蚕などによる自給自足の生活が当たり前のこととして、当時、普通に営まれていたのです。その一方で、遺跡となりつつある集落跡を訪れて、ちょっとした戸惑いを覚えたことも事実です。それは、すべてのものが朽ち果て、森に帰ってゆく必然の途上にさえ介入しようとする杉林の存在でした。環境、生態上の異物としてだけでなく、受け入れがたいほどの色彩の違和感をともなっていたからです。それまで深く考えたこともなかった、よくある日本の風景のなかで、杉林の存在の意味を私なりに考え始めた瞬間でした。

 このような小原谷で受けたさまざまな印象、出合ったエピソードなどをもとに、椋川の田んぼの中に、杉材の積み木の家からなるまちなみを(かつて現実に存在した理想郷の雛形へのオマージュとして)旅するまちなみの椋川版という位置づけで出現させようと考えています。具体的には椋川の田んぼのなかに小原谷の家をイメージした仮説の床をつくり、9月13日(日)にそこにみんなで集まり、ワイワイ、ガヤガヤやりながら、大人も子どもも住民も旅人もみんな一緒に積み木で家をつくります。旅するまちなみの中に杉材の家をどんどん建てて溢れさせ、1日だけ理想郷をみんなで”夢見る”のです。稲刈りの農繁期の真っ只中だと思いますので、お子さんたちの工作教室という看板でスタートするつもりです。でも、手の空いたときに大人もちょっとだけでものぞいてみてください。いったん手をつけると、積み木の家づくりに時を忘れること、うけあいです。

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